炭焼きのわっぱ弁当にも岩のり──日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年12月27日

聞き書 静岡食事 伊豆海岸(雲見)の食より

昼――わっぱ弁当、ぬか漬や塩漬の魚、かつお節味噌
朝飯がすむと、夫婦そろって山に炭焼きの仕事に出かける。わっぱに朝飯の残りを詰めて弁当にし、さつまいものいも切干しも持っていく。この季節、男衆は大工仕事に出かけたり、石切り場で石を切り出す人夫仕事にいく人もいるが、そういうときの弁当には、気ばって白米を多くして、買った塩鮭などを入れてやることもある。
炭焼きの仕事のときは、夫婦や家族がそろって、さくらやぶな、くぬぎの木を伐って集め、窯入れの仕事をする。子どもたちも、学校が終わると山へ来て手伝いをすることもある。だいたい自給自足の暮らしはしていても、炭焼きは貴重な現金収入源なので、家族の者が助け合っての作業になる。
炭焼き仕事の合い間には畑仕事もあるので、わっぱに麦飯をいっぱい詰めて持っていき、昼にはごはんをたくさん食べる。男衆のなかには、三合飯を平気で食べる人もいる。ぬか漬や塩漬の魚を焼いて入れることもあれば、畑で大根を抜いて、先を曲げた竹べらで大根かきをし、うずわ節や岩のりを混ぜた味噌(かつお節味噌)をつけて、おかずにすることもある。炭を焼いているときは、いも切干しを焼いて間食にする。
窯出しした炭は俵に詰めて、一人で三俵ぐらいずつ背負って山から下ろしてくるが、これも一仕事である。短い冬の日の暮れないうちに家路につく。

写真:畑で食べる昼食
わっぱ弁当にかつお節味噌を添えて持っていき、畑で抜いた大根につけて食べる。大根は先を曲げた竹でそぐ。

 

出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.80-83

関連書籍詳細

日本の食生活全集22『聞き書 静岡の食事』

大石貞男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860638
発行日:1986/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

静岡県は日本の食文化上、特異な位置を占める。大井川を境に県内の食文化が二分され、それが日本の東西の食文化の違いにほぼ重なる。民俗学上も貴重な静岡の食事の全貌。
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