聞き書 栃木の食事 鬼怒川流域(上河内)の食より
■おひる――にぎり飯か弁当、ときには焚き火でつくる野菜汁
木の葉さらいには、二頭の馬に竹の大かごを二個ずつつけ、弁当とこじはん(間食)を持って出かける。女たちは木の葉を熊手でさらい、かごに詰める。男たちは、木の葉を入れたかごをあけに馬で家と山の間を何度も往復する。
おひる(昼食)は、にぎり飯か、アルミの弁当箱に朝飯の残りのごはんとおかずを詰めて持って行く。たいてい焚き火で暖をとるので、ときにはなべに大根、いも、にんじん、それに醤油を入れて持ってきて、焚き火にかけて汁をつくる。
ゆずのほど焼きもうまい。ゆずの中をぬいて味噌を詰め、焚き火の灰の上に置いておくと、味噌が焼けてゆずの香りと一緒になり、にぎり飯や弁当がいちだんとうまくなる。これは山仕事の楽しみでもある。
こじはんにはさつまいも、乾燥いも、干し柿などを持っていく。
木の葉さらいに行かないときには、いろりになべをかけて豆を煮ておいたり、ゆで干し大根(寒ざらし大根)や切干し大根などの煮つけをつくったりする。
写真:冬のおひる
上:ゆで干し大根の煮つけ、白菜のこうこ/下:茶漬(里芋入り麦飯に納豆大根<右>をのせて)
出典: 君塚正義 他編. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.17-19