脂ののったぶりをたっぷりと――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年12月19日

聞き書 鹿児島食事 鹿児島市(商家)の食より

夜――からいも入り麦ごはん、輪切いのおっけ、ぶりの照焼き、しゅんぎくの白あえ、ぶりのあわごの煮つけ
夕食は家族は別宅へ帰って食べる。
三時半になると、おっさんは家の近くの店で材料を買い、四時ころから女中さんと夕食の準備をはじめる。旦那さあの夕食は五時に決まっているので忙しい。五時より早いのはよいが、五時すぎると機嫌が悪いので、五時前にはどんなことがあってもできるようにしなければならない。
旦那さあは食事のあと一休みして再び出かけ、九時までお店に出ている。ほかの家族は六時に食事をとる。修三さんは、忙しいときはお店で店員さんと一緒に食べることもある。
ごはんは朝と同じに炊く。おっけは脂ののったぶりの頭、あごなどに、輪切り大根とねぎを入れて煮た輪切いのおっけや、お澄ましに豆腐を細長く切って入れたうどん豆腐のおっけなどが、からだが温まる。寄せなべ、すき焼きなどもよく食べる。
夜は皿数が多くなるので、ぶりの照焼きやぶりのあわご(卵)の煮つけ、しゅんぎくの白あえなどをつくる。ぶりは年間通してとれるが、冬になると寒ぶりといってとくにおいしく、さまざまに料理してよく食べる。塩ぶりにして正月用に保存したり、こぶ巻きなどにもしている。
冬はぶり以外にも脂ののったおいしい魚が出回り、あまだいの味噌漬、煮つけ、たいの刺身、塩焼き、潮汁などよく食べる。
家族用に少量つくる煮ものは、かまどではなく、ガスこんろで料理する。

写真:冬の夕食
〔左から時計回りに〕ぶりのあわごの煮つけ、しゅんぎくの白あえ、ぶりの照焼き(ほうれんそう添え)、ぶりの頭でつくる輪切いのおっけ、からいも入り麦ごはん

 

出典: 岡正 他編. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.17-21

関連書籍詳細

日本の食生活全集46『聞き書 鹿児島の食事』

岡正 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540890055
発行日: 1989/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

鹿児島は南方食文化の北端。いも・鶏・糸瓜・豚の調理に南方の食習慣が息づく。海上の味=ヤポネシア構想の主舞台の陽光あふれる南国の味。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事