聞き書 宮城の食事 三陸南海岸の食より
■利用のしくみ
早春、あわびが口開けになると、小学校は午前中は休みとなり、一家総出で海に出る。小舟一艘で三〇貫目くらいとってくるので、海に蓄養(とったあわびを目かごに入れ、海中につり下げて餌を与えておく)したり、干しあわびに加工するが、その過程で出るきも(内臓)もよく利用している。
潮間帯の岩礁にびっしりと黒い色をして付着している小さいまるこ(むらさきいがい)は、「なた」という平たい金具ではがし、水洗いして味噌汁にする。貝の身は食べず、汁を味わう。磯の香りがよいので病人にも喜ばれる。
ぜんたけっこ(いがい)も味噌汁にするが、大きいものは殻をとって煮しめなどにする。
写真:ぜんたけっこの味噌汁
出典: 竹内利美 他編. 日本の食生活全集 4巻『聞き書 宮城の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.149-150