聞き書 高知の食事 足摺海岸の食より
■夕――父が沖から持ち帰る「菜のいお」
晩飯の料理は、菜のいおで決まる。かつおなら刺身にし、あれば、にんにくや青じそをきざんで添えるが、何もなければ、そのままどんぶりに盛って醤油をかける。めじかなら、ぶった切りにして醤油で煮つけ、ごまさばなら刺身、ひらさばなら煮つけか、ごった煮となる。かき、ほのり(ふのり)、浜あざみ(浜ごぼう)を入れた味噌汁や、つわぶき、わらび、ぜんまい、浜あざみなどの山菜の煮もの、くさぎなの若葉のあえものなど、陸でかかや子が収穫したものが並ぶのも、このときである。
主食は、生いも(からいも=さつまいも)の皮をむき、手の平にのせて小切れにしたものに、わずかの麦と米を入れて炊く、いも飯である。いもの上に米粒がぱらぱらとのっているというのが、ふつうである。
写真:春の夕食
上:〔左から〕かつおの刺身、ほのりとねぎのぬた、大菜の漬物とたくあん(以上はとり分けて食べる)/中:ごった煮/下:湯どおし飯、味噌汁(これらはめいめいにつける)
出典:松崎淳子 他編. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.256-260