ふんだんに食べる霞ヶ浦の魚――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年04月12日

聞き書 茨城食事 南部水田地帯の食より

二月十五日を変わり目といい、この日に部落総出で部落内の道普請をする。これから一年、道がこわれていては難儀するからであろうか、昔から続いている出役である。
この日までに、かぴたうない(荒起こし)を終わらせようとするのであるが、若い衆のいる家でないと、なかなかそうはいかない。おそくとも二月いっぱいには終わらせるようにする。三月にあらくれ(二回目の耕うん)をし、四月三日の神武天皇祭に種をひやす。
女衆はこのころまでむしろ織りを続ける。
四月に入ると、さつまいもの植付け、そして春蚕がはじまる。五月の節句がすぎれば田植えがはじまり、春蚕と重なるとめまぐるしい忙しさである。田植えは半月ほど続く。よいにする家もある。
畑では、麦のさく入れをする。麦の間をさくって大豆、小豆、ささぎ(大角豆)、落花生などを播くことである。さつまいももこのころ植え付ける。

麦飯、味噌汁、こうこという組合わせである。味噌汁の実には、じゃがいもなども入れる。こうこは、たくあんのほかに、ぬか味噌漬も食べるようになる。
写真:春の朝食
上:梅干し、たくあん/下:麦飯、ねぎの味噌汁

 

出典: 桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.104-106

関連書籍詳細

日本の食生活全集 8『聞き書 茨城の食事』

桜井武雄 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540850387
発行日: 1985/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 348頁

「新豆できたから納豆寝せべ」穀類豊富な県央畑作地帯、水郷ならではの淡水魚を利用した南部水田地帯。水陸の幸を素材に食事づくりを手がけてきた主婦からの聞書きによってまとめた「常世の国」茨城の食事。
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