聞き書 茨城の食事 南部水田地帯の食より
二月十五日を変わり目といい、この日に部落総出で部落内の道普請をする。これから一年、道がこわれていては難儀するからであろうか、昔から続いている出役である。
この日までに、かぴたうない(荒起こし)を終わらせようとするのであるが、若い衆のいる家でないと、なかなかそうはいかない。おそくとも二月いっぱいには終わらせるようにする。三月にあらくれ(二回目の耕うん)をし、四月三日の神武天皇祭に種をひやす。
女衆はこのころまでむしろ織りを続ける。
四月に入ると、さつまいもの植付け、そして春蚕がはじまる。五月の節句がすぎれば田植えがはじまり、春蚕と重なるとめまぐるしい忙しさである。田植えは半月ほど続く。よいにする家もある。
畑では、麦のさく入れをする。麦の間をさくって大豆、小豆、ささぎ(大角豆)、落花生などを播くことである。さつまいももこのころ植え付ける。
■朝
麦飯、味噌汁、こうこという組合わせである。味噌汁の実には、じゃがいもなども入れる。こうこは、たくあんのほかに、ぬか味噌漬も食べるようになる。
写真:春の朝食
上:梅干し、たくあん/下:麦飯、ねぎの味噌汁
出典: 桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.104-106