端午の節句 各地の食(1)北海道・東北

連載日本の食生活全集

2020年05月01日

べこもち

聞き書 北海道の食事 西海岸にしん漁場の食より

五月の端午の節句の食べものは、にしん漁で忙しいときには日延べして、五月下旬か六月上旬につくる場合もある。
うるち米を三、四時間うるかしてから水をきり、臼と杵で搗いて粉をつくる。粉はふるいにかけてきめの細かい粉にする。粉のほぼ半分は黒砂糖を溶かした汁でこね、残りはお湯と白砂糖を加えてこねあげておく。これをかしわの葉などの模様をくりぬいた木製のべこもち型に入れて形をつくる。このとき、黒砂糖入りの黒と白砂糖入りの白を半分ずつ使い、二色にする。さらにこれを、せいろに並べて蒸す。四〇分ほど蒸し、もちの表面につやが出てきて、指でさわってみて弾力があれば、蒸しあがりである。
できあがったべこもちは皿にとって食べるが、近所に配るものは、笹の葉やかしわの葉に包むこともある。

べこもちと木型

笹巻き

聞き書 山形の食事 県北最上の食より

五月五日の男の節句には笹巻きをつくる。もち米一升で、だいたい七〇個の笹巻きができる。
水に一晩浸しておいたもち米をざるに上げ、水気を切っておく。笹の葉二枚を裏合わせにして三角の形をつくり、もち米を詰め、余っている笹でふたをし、みのげ(すげの一種。みのの材料となる草で、乾燥させて使う)でしっかり結ぶ。それを五つくらいまとめて一つにつるせるようにし、大きななべにたっぷりの湯を入れて三〇~四〇分煮て一〇分くらいそのまま蒸らす。
ざるにとり上げ、横棒に下げて冷ます。きな粉をつけて食べる。笹巻きは保存がきくので、都会にいる子どもたちへ送ったりもする。


笹巻き

聞き書 山形の食事 県南置賜の食より

五月、端午の節句につくる。新暦の五月五日はまだ笹が大きくならないから、旧暦の五月五日にお祝いする。
笹を山からとってきて、たっぷりの水で笹と笹巻きを結ぶすげを煮て、水にさらしておく。もち米一升を結ぶのに笹は一〇〇枚くらい用意する。
前日もち米をよく洗い、水に浸しておく。もち米をざるに上げ、水を切る。笹もざるに上げ、水気を切る。一枚の笹を丸くくるっと巻いて三角の形にまん中をとがらせ、その三角にもち米を入れる。笹の葉のつけ根のほうをふたのようにして折り、その上にもう一枚の笹の葉をかぶせて、三角の形につくる。
米の詰まった、形の整った笹をすげで結う。五つずつ一束に結び、二束を合わせて一〇個にする。もち米一升でだいたい四〇個から五〇個できる。
大きななべに入れ、たっぷりの水を入れて一時間半から二時間くらい煮る。煮えたらなべからとり出して三〇分くらい蒸らす。
三角にした笹にもち米をあまりぎっちり詰めると、煮ているうち米がふえてはみ出すから、少しゆとりあるように詰める。
笹巻きの食べ方は、黒砂糖に少し水を入れ、火にかけてとろりとさせたものに、笹をむいた笹巻きを入れてよくまぶし、それからきな粉にまぶし、あべかわにして食べることが一番多い。ときには納豆をつけて食べることもある。またなにもつけずに白いまま食べると、笹の香りがしてうまいという人もいる。
神さまや仏さまにも、あべかわにして供えることが多い。宵節句には笹巻きを食べるならわしになっている。


かしわもち

聞き書 福島の食事 福島南部の食より

五月節句やさなぶりのときにつくる。
小豆を煮てこしあんをつくり、黒砂糖で味つけをする。
うるち米の粉五升に、もち米の粉一升五合を入れ、よく混ぜる。粉の中に熱湯を入れてよくこね、ちぎって平らな丸形にのばし、あんを入れて二つ折りにしてかしわの葉で包み、せいろでふかす。

 

出典:矢島睿 他. 日本の食生活全集 1巻『聞き書 北海道の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.238-239

出典:木村正太郎 他. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.124-124, p.175-176

出典:柏村サタ子 他. 日本の食生活全集 7巻『聞き書 福島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.194-194

関連書籍詳細

日本の食生活全集1『聞き書 北海道の食事』

矢島睿 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860010
発行日:1986/04
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

拓く・耕す・生きる。原自然と大地を食べる。四方を海に囲まれ、広大な土地をもつ北海道は、海陸とも食べものの宝庫。出身県の伝統をふまえ、進取の気性あふれる食生活。
田舎の本屋で購入

日本の食生活全集6『聞き書 山形の食事』

木村正太郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880445
発行日:1988/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

山形の「母なる川」最上川が結ぶ置賜盆地、村山の平野と山間、県北の最上、庄内平野。暮らしの柱にある米と結びついた山と海の幸のすべてを紹介。加えて、羽黒山修験道の食、酒田海船問屋の食を再現。
田舎の本屋で購入

日本の食生活全集7『聞き書 福島の食事』

柏村サタ子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870972
発行日:1987/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

にしん漬・三五八漬を肴に会津の酒を酌む。うにの貝焼、あんこう料理は浜通りの名物。豊富な食素材を伝統の生活知が生かす「みちのくのまほろば」福島ならではの味。
田舎の本屋で購入

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