すずめずし

連載日本の食生活全集

2020年05月14日

聞き書 京都の食事 丹波平坦の食より

六月になると、宮津から魚屋がいわしを売りにくる。春蚕の上蔟が終わったころである。主婦はこの日を待ちわびている。戸ごとに、どさりどさりといわしの入ったとろ箱が下ろされる。
春蚕の疲れがとれないうちに、主婦は手ぎわよくこのいわしの処理をしなければならない。
すずめずしのつくり方は、まず、すし飯を炊く。白飯である。いわしの頭とはらわたをとり、開いて骨を抜く。このとき、尾びれがちぎれないように気をつけて残す。次に甘酢につけて身をしめる。開いたいわしの大きさに合わせてすし飯をにぎり、いわしをのせる。
ぴかっと光った色合い、ぴんとはねあがったしっぽ。これこそすずめずしである。紅しょうがをかみながら食べる。
思いがけない、予定外の農休日のこの日は、あすからの農作業にもりもりと意欲のわきでる一日である。

 

出典:畑明美 他. 日本の食生活全集 26巻『聞き書 京都の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.204-204

関連書籍詳細

日本の食生活全集26『聞き書 京都の食事』

畑明美 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850066
発行日:1985/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 376頁

「三里四方の旬の野菜」の鮮度がいのちの京野菜は、近郊農家の主婦の振売りによって毎朝町場へ届けられ、その交流を通じて京料理は磨き上げられた。雅びと素朴の京の味。
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