早ずし

連載日本の食生活全集

2020年05月22日

聞き書 鳥取の食事 因幡山間の食より

代満になると、寺ごもり(寺での慰安会)のごちそうに早ずしをつくる。みんなが持ち寄って、交換しながら、にぎやかに食べくらべる。ちょうど、あぜぶき、たけのこ(淡竹、真竹)のしゅんで、さんしょうも芽吹き、初夏のしゅんの味をとり合わせたぜいたくなすしである。
塩さばの大きいもの一本を三枚におろし、皮をはいで刺身のような切身にして、ひたひたの酢に浸しておく。たけのこ、ふきは小さくきざみ、甘がらく煮つけておく。ただ米一升をふつうのごはんより固めに炊いて、熱いうちに、酢、砂糖、塩を合わせたものですし飯をつくる。ごはんのあらぼけ(荒熱)が冷めたら、準備した具を少しずつ合わせ、最後に、さんしょうの若芽をみじんに切ったものをふりこみ、木杓子で少し押して仕あげる。
押しずしより早くから食べられることから「早ずし」といわれる。

 

出典:畑明美 他. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.110-111

関連書籍詳細

日本の食生活全集31『聞き書 鳥取の食事』

福士俊一 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540910036
発行日:1991/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

日本海側有数の漁港=賀路・境港のある鳥取県は、魚、えび、かに、貝と海の幸が多彩。磯場の夏泊海岸の海女漁は豊臣時代からの歴史をほこる。因幡の山間、伯耆富士=大山の山麓には山の幸たっぷりの食生活が。
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