聞き書 鳥取の食事 因幡山間の食より
代満になると、寺ごもり(寺での慰安会)のごちそうに早ずしをつくる。みんなが持ち寄って、交換しながら、にぎやかに食べくらべる。ちょうど、あぜぶき、たけのこ(淡竹、真竹)のしゅんで、さんしょうも芽吹き、初夏のしゅんの味をとり合わせたぜいたくなすしである。
塩さばの大きいもの一本を三枚におろし、皮をはいで刺身のような切身にして、ひたひたの酢に浸しておく。たけのこ、ふきは小さくきざみ、甘がらく煮つけておく。ただ米一升をふつうのごはんより固めに炊いて、熱いうちに、酢、砂糖、塩を合わせたものですし飯をつくる。ごはんのあらぼけ(荒熱)が冷めたら、準備した具を少しずつ合わせ、最後に、さんしょうの若芽をみじんに切ったものをふりこみ、木杓子で少し押して仕あげる。
押しずしより早くから食べられることから「早ずし」といわれる。
出典:畑明美 他. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.110-111