聞き書 静岡の食事 中遠水田地帯の食より
さつまいもの切干しのことである。
さつまいもは粉質の品種を使う。大釜にせいろうをのせて、さつまいもを蒸したのち、冷めないうちに皮をむく。それから、針金の線をわたした自家製のいも切り器で厚さ三分くらいに切り、棚に広げて日なたに干す。細いさつまいもは薄切りにしないで、丸干しにすることもある。白い粉がふくように干したものは味もよい。快晴の日が続く冬の季節の仕事である。
この切干しはおやつでもあるし、乾燥すれば夏までも腐ることはないので、保存食にもなり、また、売れば現金収入にもなる。ふつうそのまま食べるが、少し焼いて食べると香ばしくておいしい。
出典:大石貞男 他. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.220-221