聞き書 山口の食事 城下町萩の食より
萩では、ふぐのことを「ふく」という。ふくは福、ふぐは不遇といって縁起をかつぐ。萩沖ではふくがよくとれる。大きさは五寸から七、八寸くらいまでいろいろである。
ふくは皮つきのまま二つに割って(二枚おろしの要領で尾をつけておく)軒下につるし、一〇日間ほどおいて乾かし、干しふくをつくる。からからになるまで干さないのがこつである。
干しふくを一口大に切ってなべに入れ、だしこぶと水をかぶるくらい入れて炊く。よく火が通って汁気が半分ほどになったとき、吸いものよりは濃く煮魚より薄く、醤油で味をつける。煮えたらなべごと寒いところへ置いておくと、煮汁が固まって煮こごりができる。おいしい煮こごりごと、皮つきふくを盛りつける。
この料理は、ふくが安く手に入ったときにこしらえる。日常のおかずに、酒のさかなによい。また、消化がよく、老人や子どもにも滋養になる食べものである。
写真:煮こごりになっている。
出典:中山清次 他. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.306-307