干しふくのすっぽん煮

連載日本の食生活全集

2020年12月10日

聞き書 山口の食事 城下町萩の食より

萩では、ふぐのことを「ふく」という。ふくは福、ふぐは不遇といって縁起をかつぐ。萩沖ではふくがよくとれる。大きさは五寸から七、八寸くらいまでいろいろである。
ふくは皮つきのまま二つに割って(二枚おろしの要領で尾をつけておく)軒下につるし、一〇日間ほどおいて乾かし、干しふくをつくる。からからになるまで干さないのがこつである。
干しふくを一口大に切ってなべに入れ、だしこぶと水をかぶるくらい入れて炊く。よく火が通って汁気が半分ほどになったとき、吸いものよりは濃く煮魚より薄く、醤油で味をつける。煮えたらなべごと寒いところへ置いておくと、煮汁が固まって煮こごりができる。おいしい煮こごりごと、皮つきふくを盛りつける。
この料理は、ふくが安く手に入ったときにこしらえる。日常のおかずに、酒のさかなによい。また、消化がよく、老人や子どもにも滋養になる食べものである。

写真:煮こごりになっている。

 

出典:中山清次 他. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.306-307

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/04
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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