聞き書 山形の食事 村山山間の食より
揚げせんべいの一種である。かきもちは二月の初午から三月の節句のころにつくる。ほかの時期につくると、かびやすかったり、割れたりして、なかなかうまくいかない。
もち米二升と大豆一合、赤砂糖少々、黒ごまや塩も少々用意する。
一晩水に浸したもち米を蒸して搗く。一方で、やはり水でもどしておいた大豆をみじんに切り、すり鉢ですってつぶし、生呉をつくる。呉とほかの材料を加え、さらに搗き、よく混ぜ合わさったところで、もち板にのしておく。少し固まりかけたころ包丁を入れ、できるだけ薄い切りもちにする。これをわらで編んで干す。一週間くらいからからに乾かして、できあがったものを保存する。
食べるときは炭火でゆっくり焼くか、ぬるめの油でゆっくり揚げ、最後に強火にして油を切り、揚げせんべいにする。生呉が入っているのと、温度をゆっくりかけることにより、大きく広がり、そりそりしてうまい。これもかかさたちの腕しだいである。
出典:木村正太郎 他. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.83-83