山菜、どじょう、ふなが食膳をにぎわす―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年03月17日

聞き書 栃木の食事 八溝山地(馬頭)の食より

春先は、ぜんまい、わらび、ふき、せり、たらぼの芽、のびる、たんぽぽなど、山でとれるものがたくさんある。野良仕事の帰りにときおりとって食べることはあるが、この季節は大変忙しいので、一日がかりで日をはって山菜とりに出かけるようなことはできない。
また、このころから川の魚もとれはじめる。にがんべ(うぐい)、ふな、やまべ、かじかなど、たくさんとれた日は、いろりでこんがりと焼いて食べたり、一度焼いた魚を砂糖、醤油で甘からく甘露煮にしてたっぷり食べる。
田んぼの中にはどじょうがたくさんいるので、夕方うつぼをかける。うつぼとは、細い竹を筒状に細長く編んだもので、どじょうが中に入ると出られなくなる仕掛けになっている。餌はぬかを炒り、たにしを石でたたいて練り合わせたものとか、ぬかとにらを石でたたいて混ぜ合わせたものを使う。
このようにしてとったどじょうは、どじょう汁にするか、ごぼうやねぎなどの野菜も入れて醤油と砂糖で煮つけて食べる。

■おゆはん―麦飯、ふきの油炒め、いもがら汁、せりやたんぽぽのおひたし
野良仕事の帰りにとってきたふきは油炒めにして、春先よく食べる。いもがら汁は豆腐とか酒粕などを入れ、おもに味噌で味つけしたもので、汁ものとしては一番のごちそうである。そのほか、いもがらは油炒めにし、醤油、砂糖で味つけすることもある。漬物のたくあんは天皇祭りの六月ころまで食べる。漬物のかわりに、せり、たんぽぽ、のびるをゆでて食べることもある。

写真:春のおゆはん
上:ふきの油炒め、たくあん/下:麦飯、いもがら汁

 

出典:君塚正義 他. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.208-209

関連書籍詳細

日本の食生活全集9『聞き書 栃木の食事』

君塚正義 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880322
発行日:1988/08
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

鮭食の伝統「しもつかれ」、伝統行事に食の歴史をとどめる栃木の食。海なし県栃木で多用される川魚、里芋。山と川と里の国栃木の習俗、行事、暮らし、食の姿を伝える。
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