聞き書 福井の食事 奥越山間の食より
■春祭り
上庄村森山では、四月十八日は春祭りがある。
春祭りのころは、まだ新鮮な野菜がとれないので、ごちそうをつくる材料は、それほど十分にあるわけではない。つぐらで貯蔵してあった大根、にんじん、ごんぼなどを使い、あぶらごんぼ(きんぴらごぼう)、揚げ(厚揚げ)とこんにゃくの煮しめ、ねぎぬた、身欠きにしんを芯にしたこん巻き、巻きずし、種いもをよったあとの里芋のころ煮(醤油味で煮たもの)、いも赤飯(里芋を入れた赤飯)、のっぺ汁などをつくる。しかし、こんなにつくらなくても、森山の人たちは「いも赤飯とこん巻きと酒さえあれば祭りはできる」という。
写真:春祭りのごちそう
左の膳:煮しめ、こん巻き、ねぎぬた、いも赤飯、のっぺ汁/右の膳:巻きずし、あぶらごんぼ、里芋のころ煮
出典:小林一男 他. 日本の食生活全集 18巻『聞き書 福井の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.91-93