聞き書 滋賀の食事 湖北余呉の食より
■春祭り
四月三日の春祭りには、親せきを招いてごちそうでもてなす。この祭りは茶わん祭りともいって、人形を中心に陶器を三丈余りにも高くつなぎ合わせた飾りを、三基の山車につけ、ねり歩く。重い陶器が揺れる山車の上でくずれないのが不思議である。昔、丹生神社近くの末遠というところで陶器を焼いていた人が、神社に陶器を供えたのがはじまりと伝えられ、茶わんのつなぎ方は秘伝とされている。この日は、敦賀からの行商の人から焼きがれいやかまぼこを買い、おこわ(赤飯)や里芋の煮ものを用意する。よごみの新葉を摘んで草もちもつくる。
写真:春祭りのごちそう
膳内:里芋の煮もの、かまぼこ、おこわ、豆腐汁/膳外:焼きがれい、草もち
出典:橋本鉄男 他. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.220-221