夏―いか漁とがんじゃとりの季節

連載日本の食生活全集

2021年06月24日

聞き書 福井の食事 越前海岸の食より

男はいか漁で忙しくなる。午後三時から四時ころに出港し、夜の間中、いかを釣って夜明けの五時から六時ころに帰港する。この朝のいかを買って、男のぼて(棒手)さんは自転車や大八車にのせ、女のぼてさんは担いで近隣の町村に売りに行く。小さな育て盛りの子どもがあってぼて売りができない期間の女たちは、峠を登る車の多い一時間ほど、車の後押しをして働く者も多い。たいてい一人で五台くらいを押す。それぞれ押す車が決まっていて、一回、三〇銭くらいもらう。
七月二日の半夏生には、里方では、家族一人が一本ずつ浜焼きさばを食べて農作業の労をいやす習慣があるので、この日、ぼてさんたちは朝早くからさばを焼き、近在に売りに行く。越前では、里方に対して海岸を「浜」と呼んでいて、とれたてのさばを浜から焼いて持ってくるので浜焼きさばという。

写真:半夏生の日に売りに行く浜焼きさば

 

出典:小林一男 他. 日本の食生活全集 18巻『聞き書 福井の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.156-158

関連書籍詳細

日本の食生活全集18『聞き書 福井の食事』

小林一男 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870187
発行日:1987/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

木の芽峠を境に嶺南と嶺北に分かれる福井県は越前と若狭の二国から成る。報恩講を開いては食を共にして絆を深めあう越前、海の幸と山の幸がともに食膳にのぼる若狭の国。
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