聞き書 熊本の食事 熊本近郊の食より
■盆
七夕祭りが終わると、熊本市内では七月が盆である。しかし、並建近辺では、七月はまだ田植え、七島藺刈りと続いているころなので、農繁期後のひと休みを安心してよこわれる(休憩できる)ようにと、八月盆(旧盆)をする。
盆前に墓掃除をして花をあげておく。八月十三日から十五日まで、迎え火、送り火、灯ろう流しと行事が続く。昔は盂蘭盆会という『盂蘭盆経』に基づく先祖供養の風習があったが、しだいに今のような簡略な供養へと変わってきたと年寄りが話す。
お葬式を出したあとの、はじめてのお盆のときは、親類や近所の人々がお供えものを持って、新しい仏さまにおまいりにくる。その年はとくにお盆の料理にごちそうを加える。遠くへ働きに出ている身内や、嫁に行った娘も泊まりがけで帰ってくる。
お盆のごちそうには、棒だらとごぼうの煮しめを出す。それに、里芋、しいたけ、こんぶ、こんにゃく、揚げ豆腐、大根、にんじん、れんこんを別々に煮た煮しめ、長ぶろ豆(ささげの一種)のごま醤油、寒天、寒ざらしだご(黒砂糖かけ)、果物、お酒までつける。
写真:お盆の料理
上:酒、ぶどう、すいか/中:寒天、寒ざらしだんご/下:いんげんのごまあえ、煮しめ、棒だらとごぼうの煮しめ
出典:小林研三 他. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.200-201