盆に必ずつくる棒だらとごぼうの煮しめ―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年08月04日

聞き書 熊本の食事 熊本近郊の食より


七夕祭りが終わると、熊本市内では七月が盆である。しかし、並建近辺では、七月はまだ田植え、七島藺刈りと続いているころなので、農繁期後のひと休みを安心してよこわれる(休憩できる)ようにと、八月盆(旧盆)をする。
盆前に墓掃除をして花をあげておく。八月十三日から十五日まで、迎え火、送り火、灯ろう流しと行事が続く。昔は盂蘭盆会という『盂蘭盆経』に基づく先祖供養の風習があったが、しだいに今のような簡略な供養へと変わってきたと年寄りが話す。
お葬式を出したあとの、はじめてのお盆のときは、親類や近所の人々がお供えものを持って、新しい仏さまにおまいりにくる。その年はとくにお盆の料理にごちそうを加える。遠くへ働きに出ている身内や、嫁に行った娘も泊まりがけで帰ってくる。
お盆のごちそうには、棒だらとごぼうの煮しめを出す。それに、里芋、しいたけ、こんぶ、こんにゃく、揚げ豆腐、大根、にんじん、れんこんを別々に煮た煮しめ、長ぶろ豆(ささげの一種)のごま醤油、寒天、寒ざらしだご(黒砂糖かけ)、果物、お酒までつける。

写真:お盆の料理
上:酒、ぶどう、すいか/中:寒天、寒ざらしだんご/下:いんげんのごまあえ、煮しめ、棒だらとごぼうの煮しめ

 

出典:小林研三 他. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.200-201

関連書籍詳細

日本の食生活全集43『聞き書 熊本の食事』

小林研三 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870316
発行日:1987/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 368頁

阿蘇は野焼きでよみがえり、萌え出る山菜や若草は人と牛の生命を育む。急流球磨川の水と豊かな米は生活の酒・焼酎を生んだ。天草の海にはさけんばかりの魚。豊かな肥後。
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