聞き書 神奈川の食事 みなと横浜と古都鎌倉の食より
パンの売れゆきは食欲と一致する。食欲の落ちる夏は売れゆきが落ち、涼しくなってくると、売りあげも伸びてくる。
秋になると、だんなさんは家族を連れて、家から歩いて一〇分くらいの中華街に夕食を食べに連れて行ってくれる。中華街に入ると、中華料理やチャーシュウ、中華まんじゅうなどを店頭に並べた店が目立つ。まんじゅうを蒸すにおい、チャーシュウを焼くにおいなのか、中華街に入ると、いつもこの街特有のにおいが漂っている。
なじみの店「聘珍樓」に着くと、食卓の用意ができるまで小部屋ですいかの種などを食べながら中国茶を飲んで待つ。用意ができると円卓がしつらえられている大きい部屋に移り、運ばれてくるいろいろな料理を食べる。はしは象牙の丸ばしである。
おみやげに、あんまん、肉まんなどを買って帰る。まんじゅうは外側の薄い皮をていねいにむいてから食べる。
写真:中華街のチャーシュウ
出典:遠藤登 他. 日本の食生活全集 14巻『聞き書 神奈川の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.34-34