聞き書 熊本の食事 阿蘇の食より
阿蘇地方とくに一の宮町では、昔から赤どいもを植える。このいもはあくが少なく色がきれいになるので、漬物に利用する。漬けた茎は赤色に変色する。仲秋の名月ころに収穫したいものずいきは、とくに色がよく出るといわれている。
里芋の茎は少量の塩で軽くもみ、一晩おく。次に樽に並べ、塩は手加減で漬けこむ。これを土蔵倉の中に置いておく。一晩で水が上がるように重石をする。一週間後に黒い漬け汁をとり、二、三日後にあげて皮をむき、適当な長さに切り、醤油をかけて食べる。毎日の食事に、また干し草切りの弁当のおかずに持っていくが、青こしょう(青とうがらし)の入った醤油をかければいちだんとおいしく、秋がきたという風情を感じさせる漬物である。
写真:阿蘇の秋を感じさせる赤ど漬
出典:小林研三 他. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.63-64