赤ど漬

連載日本の食生活全集

2021年09月22日

聞き書 熊本の食事 阿蘇の食より


阿蘇地方とくに一の宮町では、昔から赤どいもを植える。このいもはあくが少なく色がきれいになるので、漬物に利用する。漬けた茎は赤色に変色する。仲秋の名月ころに収穫したいものずいきは、とくに色がよく出るといわれている。
里芋の茎は少量の塩で軽くもみ、一晩おく。次に樽に並べ、塩は手加減で漬けこむ。これを土蔵倉の中に置いておく。一晩で水が上がるように重石をする。一週間後に黒い漬け汁をとり、二、三日後にあげて皮をむき、適当な長さに切り、醤油をかけて食べる。毎日の食事に、また干し草切りの弁当のおかずに持っていくが、青こしょう(青とうがらし)の入った醤油をかければいちだんとおいしく、秋がきたという風情を感じさせる漬物である。

写真:阿蘇の秋を感じさせる赤ど漬

 

出典:小林研三 他. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.63-64

関連書籍詳細

日本の食生活全集43『聞き書 熊本の食事』

小林研三 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870316
発行日:1987/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 368頁

阿蘇は野焼きでよみがえり、萌え出る山菜や若草は人と牛の生命を育む。急流球磨川の水と豊かな米は生活の酒・焼酎を生んだ。天草の海にはさけんばかりの魚。豊かな肥後。
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