ひえろうすいで温まる―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年02月18日

聞き書 徳島の食事 那賀奧の食より

夕飯―ひえ飯、ひえろうすい、干し大根の煮菜、炊いたずきいも、漬けだいこ
雪でも降りそうな寒い日には、ずきいもやしゃくしな、しいたけ、ねぶか(ねぎ)など、あるものをなんでもなべに入れ、味噌で味をつけたひえろうすいを炊く。だしをとるのに入れたいりこもそのまま具になる。冷えきったからだには温かいろうすいがなによりである。
この「ろうすい」は「ぞうすい」がなまったものだということで、女衆や子どもは「おみいさん」と呼んでいる。
夜なべ仕事には、男衆はわらぞうりを編む。日暮れまではなんやかやと外の仕事をし、家に帰ると女衆が夕飯の用意をしている間に、わらを打つ。夕飯を食べてからだが温まったら、いるり(いろり)の端に座って再び夜がふけるまで、足半ぞうり(足裏の半分くらいの大きさのぞうり)を編む。稲わらは、蝉谷では手に入らないので、一里ほど離れた山すその出原や助村で、気安い人に分けてもらう。

写真:冬の夕飯
上:漬けだいこ、梅干し、干し大根の煮菜/下:朝のひえ飯、味噌味のひえろうすい(ひえ、ずきいも、しいたけ、ねぶか、菜っぱ入り)

 

出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.121-123

関連書籍詳細

日本の食生活全集36『聞き書 徳島の食事』

立石一 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900075
発行日:1990/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

祖谷そばにたらいうどん、いろりのそばで香りたつでこまわし。渦潮にもまれて育つ魚やわかめ。海・山のバラエティ豊かな暮らしと食を祭事とともに再現。藍商人の食事も再現。
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