聞き書 沖縄の食事 やんばるの食より
■夜―うむと大根の煮もの
冬は日暮れが早いうえに畑仕事も忙しく、猫の手も借りたいくらいだ。
主婦は家庭菜園から大根やにんじんを引いてきて、夕ごはんの準備をする。味噌汁用の三升炊きのなべに、大根やにんじんを大きく切って水と一緒に入れ、火にかけて煮ものをつくる。大根やにんじんがやわらかくなったころに、いりこ、豆腐、豚脂、脂かすを入れ、味つけは麦味噌でする。煮汁がなべの底に少し残るくらいのときに、にんにくの葉を切って入れる。このときのにんにくの葉のにおいはなんともいえない。
またときには、正月用に屠殺して塩漬にした豚肉を使って、大根、こんぶ、にんにくの葉を入れた肉汁をつくる。肉汁は、からだ全体に栄養がいきわたる気がする。年寄りたちは、「命の薬ヌチグスイになるようだ」という。子どもたちも、熱い汁をふうふう吹きながら食べる。
写真:冬の夕食
うむ、大根の煮もの(大根、にんじん、豆腐、いりこ、豚脂、脂かす)
出典:尚弘子 他編. 日本の食生活全集 47巻『聞き書 沖縄の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.154-156