豚脂や脂のしぼりかすを使った汁ものや煮もの―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年02月13日

聞き書 沖縄の食事 やんばるの食より

夜―うむと大根の煮もの
冬は日暮れが早いうえに畑仕事も忙しく、猫の手も借りたいくらいだ。
主婦は家庭菜園から大根やにんじんを引いてきて、夕ごはんの準備をする。味噌汁用の三升炊きのなべに、大根やにんじんを大きく切って水と一緒に入れ、火にかけて煮ものをつくる。大根やにんじんがやわらかくなったころに、いりこ、豆腐、豚脂、脂かすを入れ、味つけは麦味噌でする。煮汁がなべの底に少し残るくらいのときに、にんにくの葉を切って入れる。このときのにんにくの葉のにおいはなんともいえない。
またときには、正月用に屠殺して塩漬にした豚肉を使って、大根、こんぶ、にんにくの葉を入れた肉汁をつくる。肉汁は、からだ全体に栄養がいきわたる気がする。年寄りたちは、「命の薬ヌチグスイになるようだ」という。子どもたちも、熱い汁をふうふう吹きながら食べる。

写真:冬の夕食
うむ、大根の煮もの(大根、にんじん、豆腐、いりこ、豚脂、脂かす)

 

出典:尚弘子 他編. 日本の食生活全集 47巻『聞き書 沖縄の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.154-156

関連書籍詳細

日本の食生活全集47『聞き書 沖縄の食事』

尚弘子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540880070
発行日:1988/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 400頁

世界に冠たる長寿の島、沖縄の暮しの中の食を徹底的に紹介。豚肉、油脂をたっぷりとり入れた食事は本土と異なる。東南アジアにつらなる琉球弧の料理と調理法を写真とともに再現。
田舎の本屋で購入

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