聞き書 香川の食事 さぬき平野の食より
■朝飯―焼きむすび、おっちゃし、にどいものころ煮、なすのかぎあえ
田植えがすんでも、男衆は堆肥づくり、女子衆は衣類の洗い張り、仕立て替え、繕い、真田組みと休むどころではないが、暑さに負けないよう食事づくりには気をつける。
宵のごはんは暑い夜を越したので、塩を効かせてこんがり焼きむすびにする。にどいもは皮をむいて醤油でことこと煮る。口に入れるとぽろっとくずれる。なすもやっとしゅんになり、ときにはあっさりしたかぎあえ(酢あえ)にしてみる。暑いときの酢のものはおいしい。
田植えのあと、女子衆が小麦を炒ってひき臼でごろごろとひいてつくったおっちゃしを、熱湯でかき混ぜ、塩味で食べる。薄いのをさらっと飲む人、濃いのを食べる人、好みによりいろいろであるが、おっちゃしは香ばしくておいしい。
食事の間に昼の麦をよましておく。
写真:夏の朝飯
上:なすのかぎあえ、にどいものころ煮/下:焼きむすび、おっちゃし
出典:井上タツ 他編. 日本の食生活全集 37巻『聞き書 香川の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.163-165