ぜんざい

連載日本の食生活全集

2022年06月09日

聞き書 高知食事 香長平野の食より

皿鉢料理には必ずぜんざいを入れた鉢が出され、子どもの座りそうな末席のあたりに置いてある。小豆が汁たっぷりに甘く煮られたぜんざいは、子どもや年寄りが喜ぶのはもちろんだが、さんざん飲んだあげくの上戸が、鉢の近くへ寄ってきて「あし(わし)にもひとつぜんざいを入れとうせ(入れてください)」という。口がかわっておいしいのだろう。ぜんざいのような汁けのものでも、刺身でも、すべて小皿にとるのだから、少ししか入らないわけで、口がわりにはちょうどよい。
寒中にさらしておいたもち粉で小さいだんごをゆでて入れるが、それがなければすまきを薄切りにして入れる。ほうぼうや鯛の丸ゆでを、姿のままずっぽりと浸しておくこともある。
ゆでてだしの出てしまった魚に甘みがしみこんで、ごはんのおかずの塩のきいた魚とは違い、小豆味の魚になる。

写真:魚を浸したぜんざい
皿鉢料理のひとつ。丸ゆでした魚をぜんざいの中にすっぽり浸しておき、甘みのしみこんだところで食べる。

 

出典:松崎淳子 他編. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.67-67

関連書籍詳細

日本の食生活全集39『聞き書 高知の食事』

松崎淳子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860256
発行日:1986/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

酢料理は日本一、豪快な皿鉢料理など土佐の伝統食は南国の香りがいっぱい。その他、山の民俗の宝庫といわれる高知山間の土の香りのする料理の数々を紹介する。
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