共同給食の実際

連載日本の食生活全集

2022年07月06日

聞き書  埼玉食事 鋳物工場の共同給食より

ごはんは七分搗き米、おかずは量より質で
たいていの鋳物屋では、鋳物職人は力仕事だからといって、白米ばかりの白いごはんである。そのため脚気の患者が多い。
「年季奉公の徒弟には白い飯を食べさせるという約束があるので、麦は混ぜないでもらいたい」という工場主側からの強い要望もあり、共同給食に麦は入れられない。そこで、ビタミンの多い七分搗き米を炊く。入りたての小僧は白米だと喜んでいるが、大人の職人には七分搗き米だということがわかるので、多少の不満も出る。しかし、栄養講習会などで脚気やビタミンについて説明するとよく理解し、栄養士の配慮に感謝してくれる者も多い。
おかずには、なるべく安くて栄養豊富な食品を使いたい。魚は、焼き魚ではおもに干もの、煮魚ではいわしやさばの味噌煮、生たらの甘から煮などの大衆魚になる。量としては、一人に切身一切れ分くらいは使えるが、肉になると高いので、どうしても使用量が少なめになる。かわりに大豆、生揚げ、油揚げ、がんもどき、焼き豆腐などの利用が多くなる。
重労働で高い熱量を必要としているので、カロリー源がごはんだけに片寄らないよう、なるべく油を多く使うようにする。一日一回は炒めものや、材料を油で炒めてから煮こむなど、油を使った料理をする。
揚げものは、コロッケ、精進揚げ、フライなど、一〇日に一回くらいはつくる。コロッケは、共同配給所で揚げるだけでいいように肉屋で成形したものを届けてもらう。
カルシウムがとれるよう、煮干し粉やひじき、こんぶなどの海草を使うようにする。
栄養食はたいていは住みこみの小僧のためにとっているが、なかには親方の家庭の分も一緒というところもある。親方も働く者も同じものを食べるので、小僧たちに不満がなくなる。親方の側も、食べてみればおいしいし、こんなにおいしいものをうちの小僧たちに食べさせていると思うと安心でもある。

写真:夏の昼食
盆の中:〔上左から〕大根葉の炒め煮、お新香。〔下左から〕ごはん、鮭と大根おろし/盆の外:工場で出してくれるお新香

 

出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.310-311

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集11『聞き書 埼玉の食事』

深井隆一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540910050
発行日:1992/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

「あさまんじゅうに昼うどん」は物日におけるきまりもの。小麦、さつまいも、狭山茶、深谷ねぎ、岡部の大根など自慢の作物もいっぱい。街道のうまいもの、鋳物工場の給食まで収録。
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