稲刈りのお茶飲みにいもや柿─日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年10月07日

聞き書 福岡の食事 筑紫平野の食より


十月二十日ころが稲刈りはじめの鎌入れとなる。稲刈りは天気仕事なので、天気を見はからって、早朝でも夜でも刈る。ゆうべまで刈ってなかった田が、朝起きてみると稲刈りのすんでいることもしばしばで、「あっちは夜稲刈りさっしゃったばい」といい合う。
裏作の種播きの日を遅らせることはできないので、それまでになにがなんでもと、稲こぎも夜なべでがんばる。それでも、足踏脱穀機ができ、ずいぶん楽になった。田で脱穀し、籾をかますに入れて家に持ち帰り、むしろに広げて三日ほど干し、臼すりで玄米にする。精米は、水車や唐臼でする。
とり入れが終わる日を鎌上げという家もあるし、「今日はにわ仕上げがあるぜ、鶏ども殺い(し)とかな」という家もある。夜は鶏ごはんとがめ煮が食卓に上る。
稲刈りが終わると、琉球芋や秋じゃがを収穫し、大豆を収穫する。野菜類の貯蔵をし、干し柿、つけ柿、あおし柿などもつくる。晩秋蚕を置くこともあり、息つくひまもない。

写真:鎌上げのごちそう
上:おはぎ、寒漬/下:鶏ごはん、がめ煮

 

出典:中村正夫 他編. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.115-117

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集40『聞き書 福岡の食事』

中村正夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860775
発行日:1987/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 384頁

玄界灘・有明海・周防灘の三つの海と、筑後川・遠賀川などの豊かな水にうるおう古代国家発祥の地・福岡の食は、ロマンと豊饒、篤き信仰心と伝統に育まれている。
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