聞き書 新潟の食事 佐渡の食より
稲刈りになると田植えのときと同様、三時起きをしなくてはいけない。暗いうちに起きて、食事のしたくと掃除をして、明るくなると農作業をはじめる。秋は稲刈りのほかにも忙しく、ときには、暗いうちから、近くの山に栗ひろいに行く。栗の木の下で夜明けを待ってひろいはじめる。ぎょうさんあるときには、五升ぐらいもひろえる。栗飯に炊いたり、ほうろくで炒ってから糸でつないでつるしておき、冬から春のおやつにする。
秋は収穫のとき。いろいろなものがたくさんとれる。稲刈りの作業が忙しくて大変であるが、つらいなどといっている暇がない。ただ、たくさんとれることだけを念じて一生懸命働く。そして、収穫したものは何でも、すてるところがないようにくふう利用して食べる。たとえば、にんじんの葉はごまあえに、大根葉の茎は漬物にし、葉はかて飯に入れる。さらに、さつまいもの茎はゆでて、干しておいて冬用に保存し、里芋の茎もゆでて、あえものにして食べるというように、出る野菜くずを少なくして、それもまた、牛や馬の餌にまわす。
朝食は大根菜飯に、打ち豆でだしをとったかぼちゃと大根の味噌汁、さつまいもの茎と打ち豆の煮つけ、それに大根の水漬かなすの塩漬が出る。
写真:秋の朝食
上:なすの漬物、煮つけ(打ち豆、さつまいもの茎)/下:大根菜飯、味噌汁(かぼちゃ、大根、打ち豆)
出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.288-289