収穫物はすてるところがないように―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年10月11日

聞き書 新潟の食事 佐渡の食より


稲刈りになると田植えのときと同様、三時起きをしなくてはいけない。暗いうちに起きて、食事のしたくと掃除をして、明るくなると農作業をはじめる。秋は稲刈りのほかにも忙しく、ときには、暗いうちから、近くの山に栗ひろいに行く。栗の木の下で夜明けを待ってひろいはじめる。ぎょうさんあるときには、五升ぐらいもひろえる。栗飯に炊いたり、ほうろくで炒ってから糸でつないでつるしておき、冬から春のおやつにする。
秋は収穫のとき。いろいろなものがたくさんとれる。稲刈りの作業が忙しくて大変であるが、つらいなどといっている暇がない。ただ、たくさんとれることだけを念じて一生懸命働く。そして、収穫したものは何でも、すてるところがないようにくふう利用して食べる。たとえば、にんじんの葉はごまあえに、大根葉の茎は漬物にし、葉はかて飯に入れる。さらに、さつまいもの茎はゆでて、干しておいて冬用に保存し、里芋の茎もゆでて、あえものにして食べるというように、出る野菜くずを少なくして、それもまた、牛や馬の餌にまわす。
朝食は大根菜飯に、打ち豆でだしをとったかぼちゃと大根の味噌汁、さつまいもの茎と打ち豆の煮つけ、それに大根の水漬かなすの塩漬が出る。

写真:秋の朝食
上:なすの漬物、煮つけ(打ち豆、さつまいもの茎)/下:大根菜飯、味噌汁(かぼちゃ、大根、打ち豆)

 

出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.288-289

 

関連書籍詳細

日本の食生活全集15『聞き書 新潟の食事』

本間伸夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850257
発行日:1985/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 378頁

「炊く」「蒸す」「搗く」「こねる」「焼く」。お米をさまざまに味わい分けてきた新潟県内を六つの食文化圏に分けて、それぞれの地域の豊饒を語ってもらう。
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