聞き書 宮崎の食事 宮崎平野の食より
十月はじめに種を播いた大根は一雨ごとに伸び、間引き菜は味噌汁の実や、一夜漬、おひたしに用いられる。やわらかい白菜も味噌汁や白あえ、おひたしに欠かせない。秋なすびは色も鮮やかで食卓に色を添える。
十一月になると大根は大きくなり、朝、昼、晩の食卓にいろんな形で出てくる。にんじん、ごんぼ、れんこんも煮しめに使い、なによりのごちそうとして喜ばれている。なんといっても、自宅の畑でできるので新鮮でおいしいのがとりえである。
■晩飯―かしわ飯、ごった煮、ぬか漬
出口家ではじいちゃんが二五〇羽の養鶏もしているので、ときどき鶏をつぶして食卓をうるおす。羽のところやもものやわらかい身と、骨つき身を別々にしてそれに向く料理にする。かしわ(鶏肉)飯は、ごんぼ、油揚げ、しいたけを細く切り、米、かしわ、調味料と一緒に最初から炊きこむ。このときは麦を入れないで白飯にするのでいっそうおいしく、一升炊きのごはんもすぐ底をつく。
ごった煮は、かしわ、かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、ねぶかなどを材料にして水煮したあと、砂糖、醤油で煮こみ、深皿に汁ごと盛りわけて汁をすすりながら食べる。その時期の野菜をたくさん入れればよいので、季節を問わない。骨つき身を使うことが多い。
写真:秋の晩飯
かしわ飯、ごった煮(かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、かしわ、たまねぎ、ねぶかなど)、ぬか漬
出典:田中熊雄 他編. 日本の食生活全集 45巻『聞き書 宮崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.165-166