聞き書 熊本の食事 阿蘇の食より
■村祭り
稲刈り、稲こぎ、籾干しと、収穫の作業に精を出すと、十一月にはどうにか一段落するので、それぞれ決められている日どりで村祭りがはじまる。これには収穫のあとの骨休めや体力回復の意味も含まれ、「盛り鉢さかな」をつくり、親せき一同を案内して祝う。このときの料理には、必ず鯛の生きづくりを中心に、ちくわ、かまぼこ、刺身、つき揚げ(てんぷら)、羊かん、れんこん、やまいも、巻きずしなどを盛り合わせて出す。そのほかに、のっぺい汁、混ぜごはん、こんにゃくと白菜の白あえなどの菜ざかなが出される。
秋の夜長も祭りの客でにぎわい、久しぶりにゆっくりした気分になる。
写真:村祭りのごちそう、鯛の生きづくり
出典:小林研三 他編. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.33-35