聞き書 岐阜の食事 古川盆地(国府)の食より
どこの家にもなつめの木が植えてあり、十月中旬に収穫する。生で食べるには、あかね色に着色した熟れた実のほうが甘みが強くておいしいが、煮しめ用は色つきの少ない実のほうが煮くずれしない。
なつめの軸をとり、水洗いして、三升なべで三時間くらい煮る。皮がやわらかくなったら、赤砂糖を少量ずつ入れて煮含める。
晴れ食にはなつめの半量くらいの砂糖を入れ、日もちのよいものをつくるが、日常は塩味で甘みは少なくする。秋の弁当のお菜といえば毎日がなつめの煮しめである。
干しなつめもつくる。なつめをせいろで蒸してから蚕かごに入れて日干しすると、しわしわの干しなつめになり、長期間貯蔵できる。煮しめは、これに赤砂糖少々と塩とたっぷりの水を加えて気長に炊きあげる。種が多くて食べではないが、からだにいいといってよく食べる。
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.47-47