なつめの煮しめ

連載日本の食生活全集

2022年11月02日

聞き書 岐阜の食事 古川盆地(国府)の食より


どこの家にもなつめの木が植えてあり、十月中旬に収穫する。生で食べるには、あかね色に着色した熟れた実のほうが甘みが強くておいしいが、煮しめ用は色つきの少ない実のほうが煮くずれしない。
なつめの軸をとり、水洗いして、三升なべで三時間くらい煮る。皮がやわらかくなったら、赤砂糖を少量ずつ入れて煮含める。
晴れ食にはなつめの半量くらいの砂糖を入れ、日もちのよいものをつくるが、日常は塩味で甘みは少なくする。秋の弁当のお菜といえば毎日がなつめの煮しめである。
干しなつめもつくる。なつめをせいろで蒸してから蚕かごに入れて日干しすると、しわしわの干しなつめになり、長期間貯蔵できる。煮しめは、これに赤砂糖少々と塩とたっぷりの水を加えて気長に炊きあげる。種が多くて食べではないが、からだにいいといってよく食べる。

 

出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.47-47

関連書籍詳細

日本の食生活全集21『聞き書 岐阜の食事』

森基子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540900044
発行日:1990/5
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 384頁

飛騨は山の恵み、美濃は川の恵み豊かな国。米と繭の国だが、雑穀や山菜、木の実も大切な食糧。味噌・漬物・どぶろくなど発酵食品がよく発達している。山・川の恵みを受けた八つの地区の暮らしと食を収録。
田舎の本屋で購入

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