聞き書 千葉の食事 九十九里海岸の食より
飯ずし、なれずしともいい、中羽いわしか、さば、あじ、さんまなどを使う。生きのよい魚を背開きにし、はらわたをとり、よく水洗いをする。魚五〇〇匁に塩一〇〇匁くらいふって一晩おき、水で洗って骨抜きをする。
米二合ですし飯をつくる。すし飯には、しその実、せん切りしょうがを入れてもよい。飯が冷めてから魚の腹に詰め、元の魚の姿にして、すし桶にすき間のないように並べ、しょうがのせん切りとゆずの皮のせん切り、いろどりのとうがらしの小口切りをふる。これをくり返して漬けこみ、一番上にゆずの葉またははらんを広げ、ごみが入らないように、わら二〇本くらいを三つ編みにしたものをまわりに詰め、押しぶたをし、重石をする。
半月から二〇日くらいで、魚の腹に詰めたすし飯の米粒の形がなくなり、べっとりとなって、おいしくなる。
また早ずしといって、魚を一〇時間くらい塩漬にしたのち、酢に一〇時間くらい漬けこんで、すし飯を詰めて漬けると、二日くらいで魚とすし飯がなれてきて、食べられるようになる。くさりずしも早ずしも寒い時期につくる保存食で、日常のおかずにもするが、もの日の前や正月料理には必ずつくって用意する。
まぶりずしやくさりずしは昔、岩つばめが岩のくぼみに蓄えておいたいわしを、漂流してきた漁師が見つけ、空腹をしのいだことからつくられるようになったといわれる。
写真:漬けこんだくさりずし
出典:高橋在久 他編. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.48-48