にんにやしゃこをほおばって浜遊び――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2023年05月02日

聞き書 大阪の食事 和泉海岸の食より

春ごと
春の彼岸を境にして、潮が大きく干くころは泉織の桟橋(泉州織物会社のつくった荷扱い用の桟橋)のあたりは、潮干狩りの大人や子どもで埋まる。瓦礫や石ころを除くと、大きなあさりが砂にまみれて飛び出す。「ここにも、ここにも」と声がはずむ。
春の一日、重箱ににんに、しゃこのゆがいたものを詰めて、女、子どもで出かける。お弁当は、月日貝(貝の殻)をお手塩(小皿)にして食べる。砂だらけの手を海水で洗い、ほおばるにんにの味。浜の子の春の最高の遊びである。「春ごと」という。ひな祭りはしない。男衆はこの日も、時化でないかぎり漁に出かける。

写真:「春ごと」のお弁当
にんに、ゆでたしゃこを海岸でほおばる。

 

出典:上島幸子 他編. 日本の食生活全集 27巻『聞き書 大阪の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.297-298

関連書籍詳細

日本の食生活全集27『聞き書 大阪の食事』

上島幸子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540900099
発行日:1991/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 392頁

商人の町・大阪は、日本中の一流の物産が集まる「天下の台所」。船場、天満の商家、月給取り、近在の農家・漁家の食卓に、「食い倒れ」の真相を探る。写真を添えて料理を再現した食の歳時記。
田舎の本屋で購入

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