聞き書 埼玉の食事 秩父山地の食より
■朝飯――麦飯、五月菜のおつけ、おなめ、たけのこ煮つけ、しゃくしな漬
青いものは、かけ菜(しゃくしなを陰干ししたもの)くらいですごしてきたが、田んぼにせりが出てくると、せり摘みの人影があちこちに見えてきて、どこの家も待っていたように膳にのせる。高野家ではごまよごしにする。山に行くとふきのとうをとってきて、ゆでて醤油をかけたり、酢のものにして食べる。
畑で一番はじめにできる青いものは五月菜(高菜に似た菜で、冬菜ともいう)で、おつけに入れてうまい。これの出るまでは山菜だけが青みになる。
写真:春の朝飯
上:たけのこ煮つけ、しゃくしな漬/中:おなめ/下:麦飯、五月菜のおつけ
出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.23-25