聞き書 鹿児島の食事 鹿児島市(商家)の食より
秋の深まりにつれて、果物屋の店頭にはみかん、柿、うんべ(むべ)などが並んで、秋の味覚が味わえるようになる。春田家では家族みんな柿が好物で、近郊の伊敷や吉野から振り売りが来るといっぱい買って、渋抜きしたり、つるし柿にしたりして朝夕よく食べる。もいや柿の渋抜きしたのは、いちだんとおいしい。柿は家の庭からもとれる。
■夜――からいも入り麦ごはん、きすのお澄まし、豚骨、にがごいの炒め
きすは身がきれいで、家族みんなの好物である。三枚に開き、念入りに小骨までとった身に、かたくり粉をつけて汁の実にし、みつばをあしらう。
豚骨は豚のあばら骨を二時間くらい煮て、味噌、地酒、砂糖、しょうがを入れ、さらに一時間くらいことこと煮こむので、やわらかく煮ふくまっておいしい。その汁を別にとり、こんにゃく、大根、里芋などを煮こみ、つけ合わせとする。
別に、にがごいの炒めをつくり、漬物は酢らっきょうを添える。
写真:秋の夕食
〔左から時計回りに〕十六寸豆の甘煮、にがごいの炒め、豚骨(大根、里芋入り)、きすのお澄まし、からいも入り麦ごはん。中央は酢らっきょう
出典:岡正 他編. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.29-30