聞き書 愛知の食事 愛知山間(奥三河)の食より
■へぼ(蜂)
十月から十一月の間、男衆は連れだって山へへぼとりに行く。
はいすがり(黒すずめ蜂)は、目印の綿をつけておいたかえるの肉を蜂が持って飛ぶのを追いかけて巣を見つけ、セルロイドなどを燃して蜂の親をいぶし出し、巣を掘り出す。大きな巣になると七段以上もあり、結構みんなで分けられる。
巣から幼虫を出すへぼ抜きは、夜なべ仕事に家中でやり、つくだ煮にして食べる。また、これをごはんに混ぜたへぼ飯は、めったに食べられない大ごちそうである。正月の花祭りのときなどにつくる。
ときにはいも蜂(すずめ蜂)もとるが、大きいので腹を抜いて煮つけ、酒のさかなにする。いも蜂は精がつくといわれている。
また、いも蜂もはいすがりも焼酎に漬けておき、薬用として飲む。
写真:いも蜂のへぼ酒
出典:星永俊 他編. 日本の食生活全集 23巻『聞き書 愛知の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.310-311