漬物

連載日本の食生活全集

2023年11月30日

聞き書 山口食事 山代の食より

漬物は、毎年えっと(たくさん)漬けこむ。
稲刈り、麦植えがすむと、大急ぎで白菜を漬け、畑から大根を抜き、干してこうこう(たくあん漬)を漬ける。両方とも、四斗樽にどっさり漬ける。春まではおもに白菜漬、春以降はこうこうを食べる。
また、どこの家にも梅の木はあるので、梅干しを漬ける。梅干しのちそ(しそ)は、きざんでごはんに混ぜて梅ごはんにする。みょうがやしょうがを梅酢に漬けると、いろどりのよいさっぱりした漬物になる。
山あいの地、山代では、山菜が豊富にある。たけのこやわらび、ぜんまい、ふき、みょうが、ちその実などもたくさんとれると塩漬にして保存するが、そのほか浅漬もつくって食べる。浅漬は、ひとなぎり(一つかみ)の塩をふり、一晩漬けておかずとする。
ほかに、大根の間引き菜、きゅうり、なすび、大根、かぶなど季節の野菜の塩漬もつくる。また、醤油もろみをまぶしたもろみ漬などもつくる。もろみ漬にはきゅうりやなすびがおいしい。
添えものではなく、一品のおかずとしてどんぶりいっぱいに盛って漬物を出し、収穫した野菜をむだにせずに食べる。生活の知恵である。

写真:漬物が活躍する山行き弁当
麦飯、こうこう、梅干し、じゃこ味噌

 

出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.102-103

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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