朝のいろりにただよう草もちの香り――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年12月01日

聞き書 新潟食事 古志の食より

朝――草もち、大根汁、煮豆、たくあん
東の空の白むのを待って起き出した男衆は、かんじきをつけ、こすき(木製の鋤)を持って、道踏みに出かける。この間に、主婦は朝飯の用意をする。
ふだん食べるのは二番米のことが多い。その米をへっついにかけ、くずわらなどをくべながら炊きあげる。味噌汁の実は、前の晩にゆでて水にさらしておいたせん切り大根を杓子か、ざるですくいあげてきて、なべに入れ、いろりにかける。生大根を朝になってきざんで汁の実にするのは、のめしこき(怠け者)といわれ、笑われるのである。ときには、味噌汁に里芋やいぜこみを加えることもある。
ちょうど味噌汁の煮えるころ、いろりの網渡しの上にずらりと並べた草もちが、香ばしいにおいをたてて焼けてくる。
まず仏壇にごはんを供える。主人と雇人には七つ茶わん(大きな飯茶わん)に山盛りにごはんをつけるが、その他の家族のほとんどは、この草もちで朝飯をすますことが多い。
年寄りは草もちを味噌汁の中に入れてやわらかくして食べ、雇人は茶わん一杯で足りない分は、草もちに醤油の実をつけて食べる。おかずは煮豆のことが多い。
煮豆は、前もって水に浸しておいた大豆に、味噌漬大根をきざみこんでしっかりと煮こみ、それに、夏の盛りどきにゆうごう(ゆうがお)をさいてつくった、身の厚いかんぴょうを加えて煮る。豆も味噌漬大根も、かんぴょうも、歯ごたえがあり、子どもたちは弁当のおかずに喜んで持っていく。漬物は体菜か野沢菜の漬け菜か、ほう漬大根(大根を二、三日干し、少なめの塩で漬けたたくあん)がきまって出される。
大桶に漬けこんだ漬け菜の茎のところは漬物として食べ、葉は細かくきざんで納豆に混ぜたり、温かいごはんに入れて菜飯にする。また冬中のおかずとして、煮菜にして食べることも多い。

写真:冬の朝食
上:たくあん、醤油の実/下:草もち、味噌汁(大根と大根葉)

 

出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.130-134

関連書籍詳細

日本の食生活全集15『聞き書 新潟の食事』

本間伸夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850257
発行日:1985/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 378頁

「炊く」「蒸す」「搗く」「こねる」「焼く」。お米をさまざまに味わい分けてきた新潟県内を六つの食文化圏に分けて、それぞれの地域の豊饒を語ってもらう。
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