聞き書 山梨の食事 八ケ岳山麓の食より
■夕――大根うどん、切干し大根の煮つけ、漬物
夜はごはんは炊かず、粉ものがごはんがわりとなる。毎晩とはいかなくても、農繁期のように忙しくないときは、軽い力仕事に合うように食事をつくる。
大根うどんは、どちらかというと行事のときにつくるが、内田家ではふだんにも食べる。粉を練っておほうとうと同じようにめんをつくり、大根を細長く切ってうどんの増量とする。ゆで釜から直接どんぶりに盛り出して、あつあつのところを食べる湯盛りの大根うどんは、おごりの食べものであるが、いつもの晩は、煮干しだしの醤油汁をつけながら食べる。にんじんやたまねぎ入りの汁に、しょうがやたまねぎを細かくきざんだおからみ(薬味)を加えるととても温まるし、またいちだんとおいしくなる。
おかずには、にんじん、切干し大根、切りこんぶ、油揚げなどの煮つけが合う。
冬は夕方早く暗くなるので、夕飯のあとかたづけがすむと夜なべ仕事が結構はかどる。女は昼間の縫いもののあと始末や、子どもの相手もしてやるが、もう一つ、水くみの大仕事がある。薄暗い勝手場の裏に出て、手探りでつるべ井戸まで水をくみに行く。雨が降ろうが雪になろうが、八ヶ岳おろしの北風がぴゅうぴゅう吹いてこようが、勝手場の水桶にいっぱいに水を入れておくことは明日の仕事に間を欠かせないための主婦の役目である。わらぞうりで、つまずかないように気をつける。
写真:冬の夕飯
大根うどんと醤油汁、薬味、切干し大根の煮つけ、地菜の漬物
出典:福島義明 他編. 日本の食生活全集 19巻『聞き書 山梨の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.184-187