麦飯に野草や山菜で活力がつく――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年03月19日

聞き書 山梨食事 八ケ岳山麓の食より

「暑いも寒いも彼岸まで」と昔からいい伝えられてきたが、日も長くなり、日ざしにも春を覚える。男衆は田んぼにぼつぼつ馬を連れ出して田を耕す。冬中に土を掘り返して寒にさらすと土のためによいといわれながらも、ついつい季節まで待ってしまう。桑畑にも、春肥といってうね間を掘り割りして肥料を置く仕事がある。山を眺めれば、自分の持ち山の下刈りを春にしっかりしておかないと、ならやくぬぎの木が上に伸びないので、気が気ではない。女衆は、農繁期を迎える前の作業衣の手入れや、籾種や、雑穀などの種の準備に忙しい。
夕――おほうとう、大豆の五目煮、地菜の油炒り
おほうとうにはじゃがいも、大根、ねぎが入る。ぼつぼつ土の中に蓄えてある大根が腐りかけてくるので、たくさん入れる。大豆の五目煮は、大豆、ごぼう、にんじん、こんぶ、こんにゃくの五種類で、いろいろな味が混ぜ合わさっておいしくなる。地菜はゆっくり油炒りして、とろけるようにやわらかなものが食欲をそそる。

写真:春の夕食
おほうとう、大豆の五目煮、地菜の油炒り

 

出典: 福島義明 他編. 日本の食生活全集 19巻『聞き書 山梨の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.191-192

関連書籍詳細

日本の食生活全集19『聞き書 山梨の食事』

福島義明 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540900082
発行日: 1990/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 376頁

徴兵検査で甲種合格率日本一といわれ、長寿県として有名な山梨の食の特徴は? 甲斐の山々に囲まれた海なし県ならではの雑穀、鳥獣、虫、魚の滋養豊かな食べ方、名物ほうとうの地域ごとの味わい方を紹介する。
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