聞き書 奈良の食事 斑鳩の里の食より
このあたりは気候が温暖で排水もよいので、野菜類には適している。夏は、なす、きゅうり、うり、じゃがいも、なんきん(かぼちゃ)など種類も多く収穫できる。
北海道からにしんを大量に売りに来る。干して束にしてある身欠きにしんをたくさん買い、つぶして肥料にするほか、よいところはおかずにする。
■けんずい――おにぎり、しきしき焼き、ふかしじゃがいも
夏のけんずいは、新小麦を粉にひいて、砂糖と塩少々を入れて練ったものをほうらく(鋳物の平なべ)で焼いたしきしき焼きをよく食べる。ちょっと甘くして油で焼くととてもおいしい。このほか、焼きとうもろこし、トマト、まっか(まくわうり)なども楽しみである。
写真:夏のけんずい
おにぎり、焼きとうもろこし、ふかしじゃがいも
出典:藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.68-69