押しずし

連載日本の食生活全集

2020年05月07日

聞き書 新潟の食事 頸城海岸の食より

頸城平野の平場農村で、おもに春の田植えのこびるのために用意するものである。
具は五目と称し、しいたけ、ひじき、にんじん、ちくわ、かんぴょうを塩と砂糖で味つけしておく。そのほか、梅じそ、大根の味噌漬、黒ごま、塩ざけの酢漬(塩ざけを一晩酢につけてばらばらにする)、あみのつくだ煮、厚焼き卵を用意する。
つくり方は、すし箱の内側を酢でしめらせ、底に笹を敷き、すし飯を平らにならして五目をのせ、笹をおく。二段目はすし飯と卵焼き、三段目はすし飯と五目、四段目はすし飯と梅じそ、五段目はすし飯と五目、六段目はすし飯とあみのつくだ煮、七段目はすし飯と五目、八段目はすし飯と酢漬のさけというように段を重ねるが、各段の間に笹の葉を表を上にして敷く。
最上段に笹をかぶせて押しぶたをし、石臼を重石にして一時間くらいねかせてから、箱からとり出し、手づくりの刃渡り七寸六分の鋼の包丁ですっきりと切り、皿に盛って出す。また、お盆にもつくってお客に振舞うことも多い。

 

出典:本間伸夫 他. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.253-253

関連書籍詳細

日本の食生活全集15『聞き書 新潟の食事』

本間伸夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850257
発行日:1985/08
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 378頁

「炊く」「蒸す」「搗く」「こねる」「焼く」。お米をさまざまに味わい分けてきた新潟県内を六つの食文化圏に分けて、それぞれの地域の豊饒を語ってもらう。
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