聞き書 群馬の食事 奥利根の食より
夏の日長の小じゅはんには、腹もちのよいじり焼きを食べる。
うどん粉をたらたらと落ちるくらいに溶き、ほうろくに平たく落とし、味噌をまん中に入れ、味噌がかくれるように上から溶いた粉をまた落とす。四つ五つ一度に焼ける。油をひき、火熱で焼けたほうろくを使うと、うどん粉と味噌がなじみ合い、よい香りがしておいしく焼ける。先に落とした順に裏返し、さらにいろりの渡し(脚つきの鉄の台)で焼いて仕あげる。食べる楽しみの前に、焼く人はとても暑く、汗をかきながらの仕事になる。
急いで食べたいときや時間がないとき、また好みにもよって、重曹を加え、塩をちょっと入れてそのまま焼くこともある。味噌を最初から粉に混ぜて焼くじり焼きもある。
また、やぎを飼っているので、粉を溶くときにやぎ乳を使うこともある。
出典:志田俊子 他. 日本の食生活全集 10巻『聞き書 群馬の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.46-47