聞き書 奈良の食事 吉野川流域の食より
塩さばをのせたにぎりずしを柿の葉で包んで押した柿の葉ずしは、七月十日の夏祭りには欠かせないごっつぉ(ごちそう)である。柿の葉は渋柿の葉を使う。七月初旬の葉はやわらかく、大きさも手ごろである。つる井家では一度に四升ほどつくる。
塩さばは売りにきてくれる魚屋から買うが、そのままでは塩からすぎるので、水で洗って半日干し、水気を切ってから一口大に薄くすく。米四升には、塩さばがだいたい三本分必要で、米一升につき、薄くすいた一口大のさばが七〇枚くらい必要になる。
ごはんを炊き、酢と塩を合わせてすし飯をつくる。すし飯を冷まし、一升につき七〇個くらいににぎり、さばをのせ、柿の葉で包む。押し箱にきれいに並べ、間に柿の葉をはさみながら何段にも重ねて重石をする。一晩たてば、さばのうまみと柿の葉の風味がごはんにまわっておいしい。
出典:藤本幸平 他. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.225-225